死が二人を分かつとも


「お前と会って、まず性格が変わった。根暗で、内気だった俺がお前に会いたくて行動したんだ。同じぐらいの歳でも、お前のことは見たことがない。お盆だから、どこか遠いところから来たのか。町中を探し回ったよ。朝も昼も夜も、何日も……!白い犬と遊ぶお前を見つけるまで!『チロ、チロ』ってーーちょうど、帰る時だったんだな。別れ惜しんで、父親が犬嫌いで家では飼えないから『結婚して家を出たら、チロみたいな白い犬を飼う』って、話してさ。

それからも大変だったよ。まさかこんな遠い場所にお前が住んでいたなんて。突き止めるのに、また一年かかった。お盆と正月に来るお前のあとつけても、人が多いから毎回はぐれて。でも、苦じゃない。お前のためなら、何でも出来た。

ほんと、お前はあの親友と仲良かったよな。何でも話しているみたいだったし。なのに、あいつは結局、そよ香のことペットか何かと思っていたんじゃないのか?

ペットは自分よりも下。逆らわず可愛い奴。でも、いざ飼い主の手を噛みつこうものなら、叩きたいぐらいに腹が立つ。お前らの関係って、そんなものだ」

対等ではない関係。
指摘通りのことは、私も身を持って知っている。

「裏切られて辛いよな。俺に対してもそんな不安あるか?心配しなくてもいいんだ。そよ香に時間をーー人生を費やして来たんだぞ?今までも、これからも。俺はそよ香のそばから離れない」

動かない左腕を、右手で無理やり持ち上げる。だらんと、垂れた左腕。指先は鬱血、腕は服の下でも分かるほどパンパンに膨れ上がってーー肉が、軋む、音を聞いた。

「健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時もーー死が二人を分かつとも、俺はお前を愛し、守り、そばに居続けることを誓う」

左手の指輪を掲げるために、傷口に塩を塗る行為も厭わない彼。