「なんでっ、こんな……!」
私が、真奈を突き飛ばしたのが引き金。
耐えていれば、彼もあんなことしなかったのに。
「でも、私はっ」
一度たりとも、真奈を殺したいとは思わなかった。
押しただけだった。窓ガラスにぶつかるほど、力を入れたつもりはなかった。
陳腐な言い訳。でも、殺意なんかない決定的な理由。
真奈に殴られて、みんなが笑うあの中で、たった一回の抵抗だったはずなのに。
「私が……私のせいで……っ」
大好きな人に、あんなことをさせてしまった。
血まみれの彼が怖い。平気で人を殺す彼が恐ろしい。なのに、それでもまだ、私は彼が好きなんだ。
私の唯一の味方。どんなことがあっても、支えて、愛してくれた人。
あの笑顔を私が狂わせた。
人を殺して笑顔になれる人にしてしまったんだ。
「耐えていれば、良かったの、に」
彼と付き合っているのを、隠していたのがそもそもの発端にして、原因。
発端を作ったのは私だ。
みんなを傷付けると思ってしたことだけど、こうなってしまえば本末転倒だ。
より酷い結果を招いてしまった。
もう後戻りは出来ない。成ってしまったことは戻せない。
いくら現実逃避しようとも、生きている限り、逃げ場なんかない。
ああ、だからーー


