死が二人を分かつとも


ーー

「あ、あああぁっ!」

自分がしでかした惨状のくせに、首を絞めたくなるほどの後悔をしてしまった。

真奈に怪我をさせてしまった。
窓ガラスに向かって突き飛ばすなんて、狂気の沙汰だ。

そのつもりはなかった。ただ押しただけで、こうなると思わなかった。

なんて陳腐。“痛みに泣きむせぶ真奈”を見れば、それらの言い訳も通じない。

目の敵から、恐怖の対象。
ここまでやるのかよ、と忌避された。

「そよ香、お前が、やったのか……」

騒ぎを聞きつけた他の同級生の波をかき分け、彼が教室に入ってきた。

信じられないと言った面持ちで、私に近付く。

否定出来ないなら頷くしかないのだけど、どちらも出来ない私に、彼は答えを導き出した。

「お前、なんだな……」

深呼吸をするかのような、脱力した言葉。


彼に嫌われた。もう、私の味方はどこにもいない。

「そ、そうなの!掛川くん!春野さんが、いきなり真奈を突き飛ばして!」

「最低なんだからっ、別れちゃいなよ、そんなのとは!」

「……」

ここぞとばかりに入る声に、弥代くんは何も言わなかった。

私から離れ、血が出る腕を押さえている真奈に近寄る。

膝を下り、真奈を労るように見つめていた。

「かけ、がわく、ん……」

悲痛を訴える真奈は、弥代くんに助けを求めている。

誰だって、このまま弥代くんが真奈を保健室なりに連れて行くと思っていた。

明白な悪人がいて、紛れもない怪我人もいる。

加害者は罰せられ、被害者は救われる。

許されるはずがないんだ。
こんなことをしては、庇護のしようがない。

現に、弥代くんはこちらを向かず、真奈を見つめたままで。