「…あっ。」
放課後、
外はうるさかった。
雨の音だ。
ひどいわけではない。
本当に
ただの雨のようだ。
「…傘、ないなぁ」
ボーッと
生徒昇降口に立っていた。
なんとなく、
中学生の頃を思い出す。
――
雨が急に降ってきて、
凄く土砂降りで、
傘もなく、
迎えがくるわけもなく、
ただ突っ立っていた。
友達もみんな帰ったあとで
傘の中に入れてくれる人もいなかった。
そしたらいきなり前に
同じクラスの男の子が来て、
一緒に走ることになった。
――――――――――――――――
そんな昔のことを
思い出していた。
「ゆかたん、
傘ないの?」
隣のクラスであろう人に
肩を叩かれた。
「そうなのぉ~><」
どこから出したのかわからないような
声を出す。
「じゃあ、駅まで一緒に行こうよ」
「えっ!?いいのぉっ!?」
信じられないほどに
驚いてみせた。
私は
前みたいに雨が降っても走りはしない。
傘がなくたって
走りはしない。
ゆっくりゆっくり
歩いて行く。
傘がなくても
歩いて帰れる。