「じゃあ帰ろうか」


「…うん」




ゆっくりと保健室から出て行き、


ゆっくりと萌のペースに合わせて、廊下を歩く。


無言で。




「…」

「…」




気まずいなぁ…。


こういう時に盛り上げてくれるのが、葵だったっけ……。




はぁ………。




とぼとぼと歩いて行く内に、やっと靴箱まで来た。


グラウンドで練習する野球部の声が、よく聞こえる。




「萌、靴履けた?」


「うん…」


「じゃあ、行こっか」


「うん…」




さっきから、萌は「うん」しか言っていないような気がする…。