だけど、私が愛する人全員を殺した時、


その人達はこの世にいなかった事となる。


私の記憶からも、その人達は消える。




結局、私は楽になれるのだ。




「皆…ごめんね」




そう言って、私は体を起こした。




下におりると、お母さんが作った朝ご飯がメモと一緒に、食卓の上に置かれていた。


メモには、




「お母さん、ちょっと用事が出来たから、早めに出ます。


朝ご飯は、しっかり食べるように!」




と書かれている。


お母さんの字は、綺麗だけど筆圧が弱い…なのでちょっと読むのに苦労する。




「用事かぁ…。


お母さん、いつも"用事"っていう言葉で済ませるけど、本当は何してるんだろ」




お母さんが、大抵、"用事があるから"と言って家を出る時は、帰りが遅くなる。


早い時でも夜の十一時位。


遅いときは朝帰り。




ていう事は……今日はお母さんを殺すのには向いていないという事だ。