噂のアヤメちゃん

でも…。




なんで、誰にも会わなかったんだろう？


一人くらい、学校にいたっておかしくないよね？


まだ、午後五時…。


部活をやっているとこだって、きっとあるだろうし…。




グラウンドには、野球部もサッカー部も陸上部もいない。


普段、中庭は放課後、男子の溜まり場となっているが、


今日は誰もいない。


途中、ふと通った音楽室…合唱部が練習しているはずなのに、歌声は聞こえなくて…。




…いやいやいや、何考えているの、私。




そんなー…まさか、私が"噂のアヤメちゃん"なんかに会うわけないじゃん。




でも、怖い…。


こんな事なら、会議なんてサボって幸樹君と一緒に帰っておけば良かった…。




私は、急いで校舎から出て、家に帰ろうとした。


しかし、校門のところで人影…。




本来ならば、「良かった、人がいた！」と安心すべきなのだろうが、


私は安心できず、むしろ不安でいっぱいになってしまった。