お父さんを殺したのとは別の包丁を手に取って、


私は部屋へと向かった。


ゆっくり、ぺたぺたと歩く音だけが響いた。




ぺた…。




ぺた…。




ぺた。




「幸樹君」


「あれ?ジュースは」


「ごめんね、無かったの」




私は、笑顔でそう言った。



包丁を、幸樹君に見えないように、後ろで手を組んでいるフリをして。




「ねえ、幸樹君……」


「ん?」


「キス、して……」




とろけるような、甘い声で。


私は、幸樹君におねだりする。




「珍しいな…なつみがそんな事言うなんて」