‡〜悔いる者〜‡

抜いてはいけなかった。
人間が持ってはいけなかった。
穢れは広がり、青い光りが薄れていく。

「何だ?」

赤く染まった刀から、強い光りが迸る。

「っ!!」

目を覆う人々。
その時、一層青い光りが飛び出した。
光りがおさまり、手にある刀には装飾などない。

「どういう事だ?!」

禍々しい光りを放つ刀は、清浄な気など微塵も感じさせない。

「ふははははっ。
まあ良い。
刀は手に入った。
これより戦だっ」

死に逝こうとする者を残したまま、人々は立ち去って行く。



《死ぬのか?
悔しいのか?》



「っ違うっ…己の過ち……悲し…っ」



《ならば償え
時の中に宿り
見極めよ
その眼で
我等を託すに価する者を》



「……わかった…」

ゆっくりと溶けて行く意識。
後悔の涙が…最後の涙がすべり落ちる。
それは、その形のまま、宙に引き上げられる。
身体が吸い込まれるように光りに溶けて涙の中に流れる。
光りを放ちながら、次第にその強さを増し、人の手に収まる程の大きさを取った。



《時を図れ
お前は鍵だ
私を託すに価する者の手に
その時
目覚めよう》



(必ず果たすから
許して欲しい
あなたの側へ
帰れるように…)

意識はゆっくりと後退して行く。
最後に見えたのは、手を伸ばしても届かなかった遠い日の祖父の背中だった。