‡〜欲望〜‡

刀に見とれて瞬間、何が起こったのか分からなかった。

「やっと見つけた。
龍牙刀の力に対抗することができる刀!」
「先生!!」

永久先生は、水薙刀を握り締め、狂喜に満ちた表情を隠す事もなく声高に刀を天へと突き出す。

「これでやっと!!」



《をぉぉ…ぅぅぉ》



「っ!!」

来る。
強い狂気。
調刀の力によって封じられ、ついに解き放たれた力。
それを感じた時、何かが視界に広がった。








その場所にあることで、そこは聖域とさえ呼ばれる程、清い気に満ちていた。
奥深い森。
大きな洞窟。
奥には、空が見える円形に広がる。
草、木、花。
四季など知らないというように芽吹く植物。
その中央には、地に深く突き刺さった刀。
青い光りを放ち、美しい装飾が施されている。
森に住む小動物達は、それが刀である事を知る由もなく、無邪気に走り回る。


パキッ。

ズザッ。


「素晴らしい…」

それまでの楽園を踏み荒らすように、無粋な人間達が動物達を蹴散らす。

「託宣にあったのは、間違いなくこちらの刀です」

黒い布を被った者は、怯えるように告げた。

「うむ。
これほどの刀が、このような場所に放置されているとは…」
「いかがなさいますか?」

男に付き従う者の一人が、うかがうように問いかける。

「決まっている。
私にこそ相応しい。
これこそ王者の印となろう」
「はっ。
そのように」

とって来いと言うように従者の一人に顎をしゃくって見せる。

従者はおどおどと、刀のもとへと進み出た。