‡〜宿命を手に〜‡

「……これが本来の姿か……」

刀を大地から引き抜き、自身が身につけていた衣を巻きつける。

「仕方あるまい…」

抱え持って、向かうべき所を定め歩き出す。

「託すしかあるまいて……」

思案するように眉を寄せ、これから向かう場所を想う。

「さだめし運命の元に。
時を越えて……」

呟いて迷いを打ち払う。

「私の罪でもある…か……」

置いて出てきてしまった孫を想う。
この刀を呼び覚ましたのは、力を受け継いでしまった最愛の孫だ。
自身は一人、逃げ出すように出てきてしまった。
寂しい想いをさせただろう。
いわれのない罪を着せられただろう。
自身がそうであったように…。
一族の中以外、認められない力。
人として生きるには過ぎた力なのかもしれない。

「すまなかったな……」

遮る雲もない美しい夜空を見上げ、既にこの世を去ってしまった孫を想う。
これから刀を預ける一族を想う。
そして、真にこの刀が鎮まるように尽くしてくれるだろう未来を想う。
一族に、重い役目を負わせてしまうだろう。
だがそれしか出来ない。
だから、せめて…。
刀を託したならば、寂しく逝ってしまった愛しい孫を想ってこの命が尽きるまで旅をしよう。
いつか、迎えが来たなら一言謝ることができるように…。



ちりりん。

ちりりん。



この先一生。
あの子の喪に服していこう…。
せめて、私だけはあの子の死を嘆こう。