とりあえず
予定もなくなったことだし家路へと向かう。


あー、ほんと暑いな。


なんで、店長がシフトを口出ししたんだろう。


・・・



そんなことを思っていると、
ふと、 
黒い何かが僕の足元を横切った。

「え?」


小さな、それは
黒いーーーボール?


無意識に構えていた僕は
ほっと 一息ついた。

いやぁ、見覚えのある「黒ウサギ」とか、「くろいカラス」かと思って
一瞬 戸惑ったのだ。


大体、
こんな大通りで車の往来も激しいところで
誰がボールなんて投げたんだよ。


ぽーんと歩道を向こう側に行くボールを目で追う。
「ほー、本当に見えるんだな。
 藤田、朝日さん?」


不意に、耳元で声がして、
「うわっ」

振り向く。


「なんだ。
 意外に、隙だらけなんだな?」

・・・なんだ?

そこには、黒いスーツの・・おじさんだな。
40歳ぐらい?


ちょっと、強面の薄いサングラスをした男性が
にやりと笑いながら立っていた。