「…血、出た」

「えええ!」


稲瀬の指から、血が垂れていた。




「ど、どうしたの!?」


私はすぐにテッシュを出して、稲瀬に渡す。




「…昨日の夜中、腹減ったから料理作ろうと包丁使ったら切れて、消毒して寝たけど、さっきどっかで指かすったら傷が開いた」

「絆創膏しなかったの?」

「家になかった」

「………(汗)」


お母さんがいない家って、本当大変だね…





「ちょっと待ってね」


私はポーチから、絆創膏を出した。





「…女って準備いいな」

「ほら、指出して」


稲瀬が差し出した傷のある指に、絆創膏を貼る。


自分の手が、稲瀬の手に一瞬当たって、ドキッとした…






「…はい、終わり」

「あんがと」




お礼を言うと、稲瀬はまた私に手を差し出して来た。





「…弁当」

「はいはい(汗)」


私は稲瀬に、今日の分のお弁当を渡した。

そしてチャイムが鳴り、稲瀬はまたお礼を言って自分の席へ…




教室でこんなに稲瀬と話すのって、初めてかも。

なんか変な感じ…



そしてその日、稲瀬は私によく話しかけて来た。


休み時間や移動教室…

お昼も一緒に食べた。



最初は不思議に思っていたけど、

稲瀬の優しさに気付くのに、そんなに時間はかからなかった…


一人になってもいいから、自分らしくいようと決めたから、

稲瀬はそれを気遣って、私ができるだけ一人にならないようにしてくれてるんだ。



ありがとう…稲瀬。

あんたがいて、本当に良かったよ。







放課後



「まだ雨降ってるから、委員会なしだな」

「うん…」

「今日って暇?」

「うん…」

「夜、修と飯食いに行ってもいー?」

「うん…」

「…お前、なに探してんの?」