「え?お母さん帰って来るの?」



日曜日

学校が休みの為、朝から家事に追われて一段落したところで、お母さんから電話がかかってきた。





『なによ…何か嫌そうね?』

「そ、そんなことないよ」


本当は、まだ悠と付き合ったこと言ってないから、お母さんが帰って来るのはちょっとなぁ…




『ほら…火事で悠くんの家に居候させてもらってるじゃない?少し時間が出来たし、悠くんたちにお礼がしたいし…それに大事な話もあるし…』

「話って…?」

『それは会ってから言うわ。来週の土曜に行く予定だから、また連絡するわね』

「…わかった」


そのあと少し会話をしたあと、私は電話を切った。







「うそ?聡美さんも帰って来るの??」

「ああ。さっき電話があって、来週の土曜に帰るっていうんだけどいい?」


夜、悠がバイトから帰り夕飯を食べている時に、思い出したように言った。




「もちろんだよ。うちのお母さんも同じ日にこっちに来るみたいなんだけど、いいかな?」

「いいよ。あ、おかわりいい?」

「うん!」


悠から空になった茶碗を受け取り、炊飯器を開けてご飯を盛る。


今夜は日向と修くんは出かけていて帰りが遅く、夕飯は悠とふたりきり。こんなこと滅多にないので、私はすごく新鮮な気持ちで嬉しかった。

それに稲瀬を「悠」と呼ぶようになったし、悠も私のことを「陽葵」と呼んでくれるから、なんだか2人の距離が近くなった気がする。



私幸せで浮かれていた。






そして、次の週の土曜日。





「陽葵~日向~」


夕方、お母さんが聡美さんと一緒に帰って来た。

悠のマンションに上がるなり、私と日向にギューっと抱きつくお母さん。




「悠…修…うぅ」


反対に、聡美さんは息子との再会に以前と同じように泣いていた。

悠と修くんは、めんどくさそうにお母さんをなだめていた。


このW母たちは、相変わらず変わっていない…





「お茶いれるね」

「お願い~♪今日は渋い緑茶とあとおせんべいがいいな」

「はいはいはい」


当たり前のようにリビングの椅子に座り、大きく足を組むお母さん。

私と日向はそれを横目で呆れて見ながら、キッチンでお茶の用意をする。




「いいマンションね~すごく広いわ」

「そんなことないわよ~」


お母さんの隣に座る聡美さんは、ウフフと上品に笑った。




「陽葵ちゃんたちが来てくれて、毎日ちゃんとお掃除してくれてるから、部屋が喜んでるわよ」

「そうね~あの子たち掃除好きだから」