クールな彼と放課後の恋




後ろには、セーターを着た稲瀬の姿が…!




「ボタンつけた?」

「え、あ…うん!ちょうど終わったとこ!はい」


私はブレザーを稲瀬に渡した。




「サンキュ」


ぎゅ





ブレザーに手を伸ばしてきたと思ったら、ブレザーよりも先に私の手を握って来る稲瀬。

ドキドキしている間に、稲瀬はブレザーを受け取り、私に背を向けた。




ほら、

さ、さりげなく…

こういうこともして来るんだよね…




香穂にわからないようにさりげなく、私に触ってくる稲瀬…

こんな小さなことでさえ、私はドキドキしっぱなし……




その夜も…




寝る前に私の部屋に訪ねてきた稲瀬は、くつろぎながらスマホでゲームをしている。


私はというと、おわかりのように全然くつろいでなんかいられない。

一応稲瀬の隣にいるが、緊張しながら雑誌を読んでいた。

もちろん、雑誌の内容なんて頭に一切入ってなんかいない。





ペラ…

ペラ……



チラ…



雑誌のページをめくりながら、横にいる稲瀬をちらっと見る。



普通にしてるなぁ…

緊張してる私がバカみたいなくらいに。


夜に部屋で二人きりなのに、なんでこんなに普通でいられるの?






「…なに?」

「え!」


スマホから目を離さずに、稲瀬が口を開く。

体がビクッと動いた。





「な、なにが!?」

「なんか言いたそう…」





うそ。

バレてんの!?


なぜ!!?

なんでわかる!?

稲瀬のこういうとこ、マジですごいかも。





「な、なんでもない!た…ただっ」

「ただ?」

「あーーー…えっ…と」


何か言わなくちゃ!










「し、静かだなーと思って!」

「え?」


何言ってんの私…

でも、口が自然に動く。





「静かっていっても稲瀬じゃなくて、今が!時間的に静かってこと」

「…もう12時過ぎてるからな」

「そ、うだよね…」


当たり前のこと話してるし…