クールな彼と放課後の恋

な、何言ってんのこの人…?



「それはもういいよ」

「は、はぁ…」


いいんかい。

私は気になるけど!




「…まあ、でも悪かったよ。お前の気持ちより、自分のこと優先に考えて暴走しちまった…らしくないよな」

「………ううん、いいの…」


キスは嬉しかったんだし…

謝ってもらうことじゃないよ。


…って、口に出して言えたらいいのに~!





カタ…



っ!



すると突然、稲瀬が私の唇にまたキスをした…

唇はそっと離れ…私と稲瀬は見つめ合う…




「これならいい?」

「えっ?」

「ここなら2人きりだろ?」

「…!」


そういうこと…?なの?

でも…




「…そうでもないけど?」


私たちのいる裏庭から、外の通学路は丸見え。

通りすがる生徒たちが、チラチラとこっちを見ていた。




「これって2人きりなのかな…?」

「・・・・」


私の言葉に黙りこみ、しばし考えたあと稲瀬は近くにある物置の後ろに私を押した。

どうするのかと不思議に思っていると…






「…」


稲瀬は私を物置に追い詰め、顔を近づけてくる。




「い、いな……せ」


日の当たらない日陰の中で、稲瀬は私にぐっと顔を近づけた。


心臓はバクバクいい、頬はカァっと熱くなる…そして…






「好きだ」



その言葉と共に、稲瀬と私は3回目のキスをした…


3回目だけど、これがファーストキスのような気がした。

ちゃんとキスの味がしたからだ…





「ぅ………」

「なにお前?泣いてんの?」

「ち、違うよ」


ちょっとウルッときただけ。

稲瀬から顔をそむけ、泣きそうになる気持ちをぐっとこられた。




「あ!そういえばチュロスは?」


さっき食べかけだったやつ。




「あ…笹山にあげた」

「え~全部食べたかったのに…」


香穂にあげちゃったのか…

稲瀬が手ぶらだったから、まさかとは思ってたけど…

でも香穂のことだから、食べないでとっておいてくれてるかも♪




「んじゃ、2人でぶらつく?」




稲瀬が私に手を差し延べる。


私はゆっくりと手を伸ばし、稲瀬の手にそっと添えると、稲瀬は私の手をギュッと握った。




近くて遠い存在だった人に、

やっと近づけた。





私は「うん!」と頷き、手を握り返した。