クールな彼と放課後の恋

稲瀬からキスを突然されて、驚いている自分と…

すっごく嬉しい想いと…

周りに見られている恥ずかしさ…


香穂にも、バッチリ見られてたみたいだし…あと、永井にも。


当の稲瀬は、すました顔をして何事もなかったかのよう。




私はというと…色んなものが交じって、頭がおかしくなりそうだ。





「イヤーーーー!!」


どうしていいのかわからず、わけもわからなくなった私は、気がつくとそう叫び、教室を飛び出した。


後ろから香穂が私を呼ぶ声が聞こえたけど、今の私には振り返る余裕さえなかった…




キスされた…


稲瀬に……キスされた…!



それってやっぱり…そういうこと?


そうなの…?




「…………あっ」





目的もなく走っていたら、後ろから誰かに手を掴まれた。

振り返ると、そこには稲瀬が…





「………ハァ…」


少し息が切れている私とは反対に、稲瀬は息が切れているどころか…少しだけ怒っているように見えた。




「…逃げんな」

「っ!」


そう言って、私の手を引いて歩き始める稲瀬。

こうして私は稲瀬に捕まり、どこにも逃げられない状態になった…



稲瀬から逃げたわけじゃない。

あの教室にいた生徒たちから、逃げたかっただけ…







稲瀬に手を引かれてやってきたのは、人気ない裏庭。


そう。

以前、私たちが園芸委員で世話をしていた花壇のある…あの裏庭だった。

私たちは、花壇から少し離れた場所にあるコンクリートに、並んで腰掛けた。




「・・・・」

「・・・・」


お互い何も話さない。



これじゃあまるで、別れ話をしているカップルくらい気まずい雰囲気。

さっきキスをした2人とは、とても思えない…




「………ふ」

「え?」


先に沈黙を破ったのは稲瀬。




「ふあーぁ…」


・・・・・。


あくび!?

この状況でするかな、そういうこと!




「…怒ってんの?」




今度はあくびではなく、本当に口を開いた稲瀬。




「…いや・・・怒ってなんか…」