クールな彼と放課後の恋

♪♪♪♪♪¨


女子生徒たちが、歌を歌い始める。

人気アイドルグループの歌で、誰でも一度は聞いたことのある歌で、みんながノリノリになっていた。




「…へえ~結構ちゃんと踊って歌えてんじゃん。俺はてっきり、カラオケ並かと思ってた…しかも、みんなそれなりに可愛いし」


焼きそばの麺をすすり、まるで審査員のような口ぶりの永井。



なにその上から目線…

しかも、あの先輩たちのこと可愛いって言った?

香穂がいない時で良かった…




「そうか?俺は男に見られたいだけで、ああゆう衣装着て歌ってる女は嫌いだけど…」

「まーな」


ボソッと言う稲瀬に、永井はうんうんと頷いた。



稲瀬は、ああゆう女子が苦手なのかな…

可愛くて目立ってて…


それが本当だったら、少し安心する。

私は、あのステージには立てない性格だから…




「ごちそうさん」

「もう食べたの!?」


稲瀬の食べていた、焼きそばのパックは空。

相変わらずの早食い…




「あ、忘れてた。これお前に買っといたんだ…」

「え?」


稲瀬が持っていた袋から出したもの…それは…




「チュロス!?」

「そ。メープル食いたいって言ってただろ?」

「しかもメープル味!?嬉しい!さっきチュロス買いに行ったら、メープルは売り切れだって言われたの」

「ダサ」

「なによっ」


プッと笑う稲瀬に、ちょっとむくれる私。


でも、私が言ったことを稲瀬が覚えてくれてたなんて嬉しいな…

あー幸せ過ぎるっ

早く香穂、戻って来ないかなー!

話したいよっ




「…ん。食え」


チュロスを持ち、私の口に近づける稲瀬。



このまま食べるってこと!?

は、恥ずかしいよ…


食べることを躊躇していると…




「っ!」


稲瀬は私の口にチュロスをちょんとつけ、徐々に口の中に入れてきた。



稲瀬の目見れないよ…

こんなことなら、あのステージで歌歌う方がまだマシ。




「ぐっ」


すると、チュロスを一気に口の中に押し込む稲瀬。




「ちょっと~!」


チュロスを半分くらい食べ、口でもぐもぐしながら稲瀬の腕を叩く。

稲瀬はからかうように笑った。



からかわれてるけど、嬉しいな。

稲瀬とこんな時間過ごせてるんだもん…





トン…


「あ…」


突然肩に何かが当たり、振り返ると教室に入っていた生徒にぶつかってしまったみたいだ。



「す、すいません」


ぶつかった人に謝っていると…




ぐいっ



稲瀬が私の手を握り、自分の方へ引き寄せた。