クールな彼と放課後の恋

「大丈夫だよ」


っ!


その時、稲瀬がボソッとそう言って、私の背中をそっと撫でた。

具体的なことはなにも言ってないのに、稲瀬がそう言うと本当に大丈夫な気がしてくる…


なんて頼りになるんだろう…

単に私が、稲瀬のことが好きだからかな?



いや。

それだけじゃないよね…


ピンチの時、稲瀬はいつも私を助けてくれるんだよ…







ウーウー…

ウーウーウーウー…



「消防車来たぞ!」

「みんな離れろ!」



消防車が二台、救急車も二台。

狭い住宅街にやってきた。


少しだけホッとする私…




「みなさんは下がってください!」

「けが人はいませんか!?」


消防車と救急車から、それぞれ隊員が慌ただしく出てくる。





「陽葵ちゃん!」

「あ、おばさん…」


すると、野次馬の中からいつもお世話をしてくれている隣のおばちゃんが私に駆け寄ってきた。





「無事で良かった~探してたのよ」

「おばちゃん達も無事で良かったです…」

「山田さんちのキッチンからの火災ですって!揚げ物やってたら、突然鍋から火が出たらしいわよ」

「そうなんですか…」


山田さんとは、災が出た家の名前。





「それで山田さんは…?ケガとかはされてないんですか?」

「山田の奥さんは大丈夫よ。でも火を消そうとして近づいた旦那さんが、腕を少しヤケドしたみたいだけど…でもたいしたことないって。今のところ、他にけが人はないって」

「そうですか…」


良かった…




「陽葵ちゃんたちも本当に無事で良かったわ。火災に早く気がついて良かったわね…もし遅れたりしてたら・・・・・」






おばちゃんは、私の後ろにいる稲瀬を見て…急に黙り込んだ。

そしてすぐに、また私を見て頬を赤くした。





「あら、そうだったのね…大事な最中に火事なんて、災難だったわね」






は…?




大事な最中って……