唇を噛み締めるあたしに、隣りの子はふわりと優しく微笑む。


 何もかも知ってるよって、そんな顔。


 ……ああ、馬鹿だなあ。


 損してるって言ったけど、アタシ、ほんとに損してたね。


 きっとこの子が言いたかったのは、アタシが考えているのとは別のことなんだろうけど。


 変なことにこだわって、大事なことをまた見落とすところだった。


 こうして待っててくれた人がいる。


 見捨てないでいてくれた人がいる。


 アタシの理想、望みは既に実現していたのに、アタシは何を求めていたんだろう。


 隣りにずっと、この子はいてくれたのに。


 ―――ねえ、今日で卒業だね。


 ひとりにしてごめん。


 一緒にいてくれてありがとう。


 暗黙のルールとか、アタシの気持ちとか、そういうのを全て知っているのはきっと、目の前のこの子だけ。


「あのさ」


 さっき言いかけた言葉の続きを言うべく、口を開く。


 アタシの理想。


 それは、“『友達』と笑い合うこと”。


 ただ、それだけだった。


 隣りにいる彼女は、そんなアタシにまた笑いかけ、それを見て、アタシも笑った。