「サエちゃん、本当によく見てるね」


 ある時、いつものごとく隣りを歩く彼女から放たれたその一言。


 そう言われて、どれだけ狼狽えたんだろう。


 きっと、顔も真っ赤だったと思う。


 周りにバレバレなくらい、アタシはそっちを見ていたんだって思ったら、すごく恥ずかしくなった。


 慌てふためくアタシを見て、そうさせた張本人はケラケラとおかしそうに笑っていた。


 そして、その時に自覚した。


 アタシが見ていた人や、光景。


 それに対する自分の気持ちを。


 彼らの間には、アタシの望んだ全てのものが詰まっているように見えたし、輝いて見えた。


 アタシの手には到底届きそうにないところにそれはあった。


 だけど、いつかアタシもそこに行けたらいいのにって手を伸ばしたくなるほどの魅力が、彼らの元にはあった。


 憧れで、理想で、望み。


 それを体現している彼らの仲間に入りたかった。


 そんな気持ちが、最初だった。


 純粋だったこの気持ちは、後に歪んでしまったけれど。