俺が高校生活で手に入れたものなんて、片手で数えられるくらいしかない。


 でも、手に入れた数少ないそれは、俺にとってかけがえのない大切なものだ。


 それをくれた恭也と亜希。


 コイツらは、高校生活のキレイな思い出だ。


「じゃ、そろそろ俺行くから。仕事、頑張れ。それと……」


「はあ!?」


 去り際に、恭也が言った一言。


 『俺がいいって言うまで、宮下さんに連絡とるの禁止。』


「ちょっ、おい、解決したんだから連絡くらい……!」


「慶ー!! お店開けるわよー! 準備終わってるのー?」


「げっ!」


 時間が過ぎるのは早くて、おふくろに奥からそう叫ばれた。


 くそ、こんな時にタイミング悪すぎんだよっ!


「ふっ、じゃあ、そういうことだから。またな」


 悪態をつく俺に笑って、背を向けて歩き出した恭也。


「おい! まだ話は終わって……!」


 終わってない、そう言いかけたけど、やめた。