お互い笑って、なんだか照れ臭くなった。


 だけど、嬉しい。


 やっぱり恭也とは、これからも親友でいたいって思った。


 でっかい心で、繊細さも併せ持つけど、誰よりもコイツは亜希を大事にするだろう。


 その大きな手で、幸せにするんだろう。


 そんなことを思いながら、握りしめた拳を下ろした。


「……今日、これから行くのか」


「さっきも言った」


「……亜希には会って行かねえのか」


「宮下さん、今日は卒業式の片づけで学校だから。つーか、呼び捨てうざいんだけど」


「はっ! 恭也なんか“佐伯先輩”なんて呼ばれてるもんな? 俺は“慶ちゃん先輩”だし?」


「……ほんとうざい。まあ、宮下さんに触れるのは俺だけだし。俺の彼女だし」


 そんな毒を含んだやりとりを、前みたいにできることが楽しい。


 それに、もう傷つかない。


 世界で1番可愛い後輩と、世界で1番大切な親友が結ばれたんだから。


 俺はただ、祝ってやればいいだけだ。


「オメデト」


 まだ、心から素直に祝えない。


 でも、亜希の幸せそうな顔が思い浮かんで、自然とそんな言葉が口からもれた。


 恭也は驚いたみたいだったけど、ただ「ありがとう」と口にした。