亜希が恭也を好きなこと、恭也が亜希を好きなこと。


 その事実もぶっちゃけどうしようもなくキツかったし、当人同士それに気づかないこと、俺に狙わせる隙を無意識に作っていたことも、相当キツくて苦しいものだった。


「だけど、それは俺が……!」


 勝手に、亜希を好きになっただけで。


 そいつがたまたま、恭也を好きで。


 お互い想い合ってるってとこに、俺が割り込んだだけだ。


 無視や弁解を聞いてもらえなかったことも、俺のせいだ。


 コイツが謝ることなんて、何もねえんだよ。


 言葉に詰まる俺に、儚げに微笑む恭也。


 いつから、こんな表情をするようになったんだろうな。


 それは、絶対に、亜希の影響だろうけど。


「……まあ、俺だって悪かったんだよ。もちろん慶も悪すぎるけど。……だから、これでおあいこな」


 そう言って、笑った恭也。


 握り拳をこっちに突き出して、俺の反応を待っている。


「……俺も、悪かった」


 そう言って、恭也の拳に、自分の拳をこつんとぶつけた。


 昔からの、俺たちの仲直りのあいさつだ。