でも、こうも気づいてもらえないとさすがにもやもやする。


 簡単に知られるのはイヤだし、俺が3年も好きだったと知られるのは照れ臭いし。


 だけど、あの時から惹かれていた、と。


 そう伝えたいわがままな俺がいたりもする。


 なぜ俺がリコリスの話をしたのか、ちょっと首を傾げて考える小動物みたいな仕草が、愛らしくて。


 赤い目をくるくると動かして、俺の腕にすっぽりおさまっている宮下さんはウサギみたいで。


 こんな可愛いとこを間近で見られるようになったんだから、そろそろ教えてあげてもいいのかな。


 だいぶ気になっているみたいだし。


 ……と、思ったんだけど。


 突然俺の腕の中で硬直した宮下さん。


 何事かと思ってその顔を覗き込むと、彼女は大きな目を真ん丸に見開いていて。


 短くなった髪を揺らし、俺をそっと見上げてきた。


「なんで、佐伯先輩、リコリスが家にあるって知ってるんですか……?」


「……!」


 鈍感な宮下さんにしては珍しく、と言ったら失礼かもしれないけど。


 意外なことに、彼女は俺が言ったさっきの言葉が変だと気が付いたようで。


 しきりに瞬きをしながら、俺を見上げてくる。


 ……しかたないな。


 やっぱり俺は、宮下さんには敵わない。


 しょうがないから、教えてあげよう。


 あの日のことを、リコリスの意味と一緒に。