まあ、いっか。
佐伯先輩と和解もしたところで、今は穏やかムードだもんねっ。
「なんですか?」
私がそう聞くと、佐伯先輩はまた表情を曇らせた。
え、なんで?
私、何も変なこと言ってないよね?
そう不安になっていると、佐伯先輩が口を開いた。
「その“佐伯先輩”っていうの、やめない?」
「えっ」
何を言われるのかと思ったら、名前の呼び方だった。
えっと、じゃあ私は佐伯先輩のことをなんて呼べばいいんだろう?
「だいたいさ、ずっと思ってたんだけど。慶とか七種のことはあんな懐っこい呼び方してんのに、なんで俺はいまだに“佐伯先輩”なの? というか、俺はもう先輩じゃないよ」
ムスッとしながら話す佐伯先輩に、胸がキュンっと音を立てた。
だって、だって。
そんなこと言われるなんて思ってもなかったし、佐伯先輩がそんなことを気にしてるなんて思ってもみなかったから。



