「じゃあ、そろそろ行ってくるね!」


「うん! 良い記念日をー!」


 凉に大きく手を振って、帰路に着く。


 待ち合わせは、駅から少し離れたところにあるカフェ。


 そこは、佐伯先輩の行きつけのお店なんだって。


 学生の利用が少なく、静かな雰囲気の場所らしい。


 先輩はどこにいてもその容姿で目立っちゃうからね。


 やっと見つけた穴場で、唯一落ち着ける場所なんだって。


 佐伯先輩にこっちまで来てもらうのは申し訳なかったんだけど、『久しぶりにそっち行きたいから』ってことで、そこで会うことになった。


 佐伯先輩にとって安息の地であるその場所に私も行けるんだって思ったら、すごくドキドキしてきた。


「おーい、亜希。今日記念日だったよな? おめでとー」


「わっ、びっくりした! みーくん、ありがとうっ」


 学校を出て駅の方に向かって歩いていると、後ろからみーくんに突然声をかけられた。


 というか、みーくんまで記念日を覚えてくれてたんだね。


 隣りに並んで歩くみーくんにそう言うと、「まあ、モテる男は細かいことまで覚えてるもんなんだよ」なんて、笑いながら言われてしまった。


 たしかにみーくん、モテてるみたいだからね。


 佐伯先輩と慶ちゃん先輩が卒業して、その後を継ぐかのように一気に彼は人気が出始めたから。