そう、あの時から佐伯は変わり始めたんじゃないかと今になって思うのだ。


 宮下の担任になる前の、6月のある日の昼休み。


 たまたま廊下を歩いていると、反対側からものすごいスピードで走ってくるヤツを見かけたあの時あたりだ。


 俺は教官室に用があって、体育館から出てきたばかり。


 走ってきたヤツ、それは宮下。


 昼休み開始早々に、俺がさっき出てきたばかりの体育館の扉、そこの脇にあるギャラリーへと続く階段を、勢いよく駆けあがって行った彼女。


 ああ、そういえば昼休みは佐伯たちがここでバスケをやっているんだったな、と。


 ということは彼女もそれを見に来る相当なミーハーなのか、それとも……。


 そこまで考えて、俺は職員室に戻ったわけだけれど。


 思い返せば、その頃からなのだ。


 あいつが少しだけ、いつもと違う様子を見せるようになったのは。


 部活中、わけもなくギャラリーを見上げたり。


 そしてどことなくだけど、表情が柔らかくなったようなそんな印象を受けた。