佐伯が入学したときに俺もこの高校に赴任してきて、最初に会った頃から卒業するまでの3年間、ずっとこいつを見守り続けてきた。


 教師だから知っている、こいつの家族構成。


 そこからは、何か暗いものを抱えているのは容易に想像できて。


 だからこんなにも頑なに、感情を閉ざしているのかと思った。


 それが、俺がこいつを観察し続けた理由だ。


 1年経ってもやっぱり感情は読めなくて、相変わらずわかるのはシュートが決まった瞬間の喜びだけ。


 部活以外、学校での佐伯はやっぱり感情は表に出さないが、男子とはよく話す。


 女子のことは避けているみたいだった。


 その詳しい理由は、俺は知らない。


 ……だけど、いつの頃からだっただろう。


 少しだけ、佐伯が変わり始めたのは。


 よく見ていた俺にだけわかる、些細な変化だった。


 佐伯が2年になり、俺もここにきてから2年目となった時、1年生のクラスの担任を任されることとなった。


 初めての担任で緊張はしたが、まあいい経験だ。


 で、俺はすぐに知った。


 入学したばかりのその1年生の中に、教師の中でも話題になるほど目立つ4人がいるということを。