夜はだんだん更けていく。


 窓の外は暗いが、確実に朝は近づく。


 慶の話の内容は、恭也にとってどれも恨めしく思うばかりだった。


 この時ほど、受験を怨んだことはないと思う。


 慶の口から話される彼女の名前に恭也は何度もイラついたが、その話の内容はいつしか“亜希と電話をした”という自慢話から、“亜希自身”の話へと移り変わった。


 “亜希が好きだ”


 お互いがはっきりと自分の気持ちを伝えたのは、この時だ初めてだった。


 相手の気持ちを知っていながらも直接言葉を聞くとドキリと胸は嫌な音をたてた。


 しかし、さすが腐れ縁とも言うべきか、それだけで仲がこじれるなんてことはない。


 お互いの気持ちを再認識して更に、ふたりで亜希についての話で盛り上がったのだった。