母さんの楷書で書かれたきれいな字。 お別れの手紙まできっちりしているとこを見ると、涙なんかじゃなくて、不思議な笑みがこぼれ落ちた。 だって手紙には、 『今から』とか、『今も昔も』とか、『今やってること』とか……。 『今』ばっか大切にしてるんだから。 これは未来に書く手紙じゃないじゃん。 俺への手紙だろ? 俺を突き放すための、おわびの手紙。 突き放すんなら、きれいごとばっかり書いてほしくなかった。 『好き』とか、『愛してる』とか、簡単に書くなよ……。