僕がここに来てから、祭りが始まり、血を見ない日はない。
 所詮、鬼から逃げるなんて不可能なんだ。

 いや、逃げ延びている人もいるだろう。
 でも、逃げ延びるということは、誰かを犠牲にしているということだ。
 手拭いを落とされた人も逃げ延びられればいいが、それはまた、その人が助かるために、他の人を危険に晒していることに他ならない。

「……この祭りは、いつ終わるんだ」

 僕は鬼切丸を肩にもたせかけて言った。
 何かね、不思議なんだけど、鬼切丸を持っていると、落ち着くんだ。

 心が荒んでるのかな。
 そりゃそうだよね。
 こんな、鬼に追っかけられて、いつ死ぬかもわからん村でさ。

 しかも、いつの時代なのかもわからんし。
 ……帰れるのかもわからんし。

「終わらせるために、宗士を呼んだのだ」

 静かに、佐馬ノ介が言った。
 僕はちょっと顔を上げる。

 そうか。
 僕は佐馬ノ介に呼ばれたんだ。

 鬼切丸の刀守に。
 この奇祭を、終わらせるために。