薄明るくなりかけた頃に帰宅。 

大きな物を失ったショック・・・3人が落胆したままそれぞれの部屋へ。 鏡の前に立ち自分の姿を見た。 アザだらけの顔に血だらけのタンクトップ。 運が悪ければ俺も死んでいただろう。 

いつまでたっても子供のままの自分。 あまりの情けなさに腹が立つ。 ”いっそこのまま闇の世界で生きてやろうか”とヤケクソになる。 親には絶対に迷惑を掛けないという思いで自立したつもりだったが、結局やってる事は親不孝者と一緒。 死んでしまったら意味が無いという事すら気付かなかった大バカ野郎。 笑顔で微笑む両親の顔が目に浮かぶ。 

もう全てが嫌になった。 帰りたい・・・日本で平凡に生きていた頃を思い出し、涙が止まらなかった。 

それから俺は学校から帰ってからも遊ぶことなく、英語試験の為に必死で勉強だけに打ち込んだ。 人に負ける前に自分に負けるほど恥ずかしいものはない。 ここで帰国したら間違いなく俺は負け犬になる。 人と同じ事をしていてもダメ。 『学』がないなら人より数倍勉強して当たり前。 そして Theo が最後に言ってくれた『頑張れ』の一言。 

”早くこの生活から抜け出したい”・・・その一心で。 

試験発表の当日、見事に大学に入る為のスコアをクリア。 アメリカの大学へ進学するという念願の夢が叶った瞬間だった。

大学に入る手続きを終え正式に合格証明書をもらい、電話で両親に吉報を伝えた。 弾む様な声で喜んでくれた。 一番驚いたのは自分自身。 

まさか自分の人生の中で大学へ入って勉強するなどと、思ってもいなかったからだ。