黒薔薇~美しき欲望~







そしてあたしはゆっくりと後ろに倒れこんだ。





トン、とあたしの素肌と冬夜のシャツが触れ合う。







「拭きづら」






冬夜はそんなことを言いながらもあたしを拒まない。





ほんのりと素肌に感じる冬夜の熱。





その熱がとても心地よい。





そしてどれくらい経ったのだろう。





「後はドライヤー使え」





冬夜のその一言が終わりを示した。






「ありがと」






肩は冬夜に預けたまま後ろを向くと、冬夜の顔が間近にあった。





冬夜はクスリと微笑み、あたしに顔を近づけてくる。





その甘いムードに乗り、あたしも目を閉じ受け入れようとしたけれど…。




ベチ、と重たく冷たいものが顔に乗せられた。





一瞬分けがわからず固まる。






目を開くと視界は真っ白。






少しイラッとしながらも、顔に乗せられた水分たっぷりのタオルを剥ぎ取った。






キスされるのかと思ったし。







「最悪」






低い声で呟き、それを冬夜の顔に投げつけてやる。





でも冬夜は見事にそれをキャッチしやがった。






「残念」






ニヤリ、と冬夜は笑いながらあたしを見る。







……腹立つ。





いつもそうだ。





いつも冬夜が主導権を持つ。





他の男はみんなあたしを腫れ物に触れるように扱うのに。





このあたしの顔にタオルを投げつけるなんて冬夜以外ありえない。




他の奴らがこんなことをすればボッコボコに殴ってやる。





あたし、こう見えても喧嘩だけは得意。





護身術として習っていただけだけど、そこらへんの男には絶対負けない自信がある。





でも冬夜には敵わない。





何もかもが敵わない。