「ありがとう。そろそろ家も晩御飯の時間かな?私はこの辺で失礼するよ。奏ちゃん、お茶ごちそう様でした」


ハルニレから焼き鳥の入った袋を受け取ると、お爺さんはガーデニングの用具を入れたバケツを持って立ち上がった。じゃあ、またと片手を挙げて挨拶をし、奥の平屋へと去って行った。


「私もご飯の支度しなくちゃ」とつられて立ち上がった。




そんな数日前のやり取りをふと思い出していた。


その日の夜くらいからぽつぽつと雨が降り出し、今日のニュースでは関東でも梅雨入りしたと、お天気キャスターが公言していた。


今も窓の外では、霧雨が降り続いていた。


「おや、奏ちゃんどうしました?珍しいですねこんな時間に」


扉を開けてハルニレが入って来た。食堂の壁時計で時間を確認すると午前1時を回った所だった。


「何か眠れなくて……」


ホットミルクを作って、のんびりと飲んでいた。


「ハルニレくんは、仕事がひと段落した所?」


疲れた顔をしていたので、そう訊ねると、そうなんですと肩をぐりぐりと回しながら答えた。


「ちょっと、小腹が空いたなって思って」


「何か作ろうか?」と訊いた所で、「いえいえ、奏ちゃん明日も仕事でしょう?気を遣わなくても大丈夫ですよ。ありがとうございます」とにっこりと笑いながら、やんわりと断る。