恋じゃなくてもイイですか?



お婆さんの後ろには大きなトランクを引いたお爺さんが立っていた。お出かけ用のジャケットにお爺さんのコレクションだという中折帽にはフワフワした鳥の羽根がついている。


「2人ともオシャレをして、どちらにお出かけですか?」


「ウフフ、お友達が軽井沢でペンションを経営しているのよ。新緑の季節は毎年、お世話になっているの」


訊けば、仲のいい友達夫婦と1週間程滞在するらしい。白樺の並木道を散歩したり、テニスをしたり、のんびりと過ごすのだとお婆さんは教えてくれた。


オシャレをして外に出かけて行く2人を羨ましいと思う。2人には一生懸命に働いてきた日々があって、今、好きなことをして楽しんでいるのだ。


「ハルくんに郵便物の管理をお願いしといてね」


呼び止めちゃってごめんなさいとお婆さんはペロリと舌を出す。その仕草もカワイイ。自分よりだいぶ年上の人にカワイイだなんて失礼かもしれないけれど、お婆さんと話す度にそう思ってしまうのだ。


足取り軽く旅行に向かう2人を、門まで見送って、ふわぁと思い切り伸びをした。空を見上げると雲1つない快晴だ。やっぱり洗濯をすることにしようと決めた。


そのまま庭の方に視線を落とす。ブロック塀を囲うように連なるツツジの垣根には、真っ赤な花が咲き乱れていた。花の香りに誘われてモンシロチョウが垣根の周りを飛び回っている。思わず写メに残したい風景。


洗濯物を干して、一息ついたら、今度はお昼ご飯の用意だ。


今日は、簡単に残りものの野菜を入れて、インスタントの塩ラーメンにしてみた。今は生麺か!?と思う程、インスタントの麺もクオリティーが上がっているけれど、たまに慣れ親しんだこの味を食べたくなるのだ。


仕事が佳境に入ったハルニレも、一緒に食べると言うので、いつものように向かいあってズルズルと麺を啜る。


「どう、仕事は順調?」


取り止めのない話をしてみる。