よく晴れた土曜日の午前中、朝食を済ませ、食後のコーヒーでまったりとしていた。ハルニレは締切り間近のイラストがまだ描き終わっていないらしく、コーヒーを片手に作業場へと戻っていった。
ハルニレの飲むコーヒーはブラックで、私のコーヒーはミルクとティースプーン2杯の砂糖を入れたカフェオレ。
好みの違いも少しずつ解り始めてきた。
一緒に住んでいるのだけれど、お互いに人見知りの性格らしく、深い話は未だしていない。一緒にご飯は食べているし、家の中で会えば挨拶はするのだけれど、友達とはまだ呼べないかな?
少し距離感のある寮のオーナーと入居者という言い方が一番合うかもしれない。
でも、この距離感が心地いい。
食堂のソファに座り、ぼんやりとテレビを見ていた。ふと、庭を眺める。今日は天気がいいなぁ、洗濯しようかな?その後は何をしようか?自転車で出掛けるのもいいかもしれない。隣町のホームセンターまで行ってみようかな?
頭の中で今日1日の計画を立てていると、窓の外でハルニレのお婆さんが手を振っていた。
「おはようございます。すみません、こんな恰好で」
立ち上がり、庭へと続くガラス戸を開ける。Tシャツにスウェット地のルームウェアとは油断していた。Tシャツの裾を引っ張りながら、寝間着姿のままであることを詫びる。詫びた所で、少し伸びた前髪をちょんまげみたいにしばっていたのを思い出し、慌ててヘアゴムを取る。
「ウフフ、いいのよ。平日は働いてるんだから、休日くらいゆっくりしないと」
お婆さんはにっこりと笑いながら答えた。今日のお婆さんはスライスした原色のオレンジが並ぶ、レトロな柄のワンピースを着ていた。ウェストの辺りに細いベルトをして、足元にはエナメル靴を履いている。
お婆さんなのに少女のような人だ。私もお婆さんのように年を取ってもオシャレを楽しみたいなと思う。

