「ハルニレくんのお婆さん、いつも私の分もおかず作ってくれるし」
ハルニレのお婆さんは私の分もタッパーに入れて持ってきてくれるのだ。素朴なお婆さんの手料理は、田舎のお母さんの味を思い出させてくれる優しい味だった。
貰ってばかりで、何もお返しが出来ていないことが気になっていたのもある。なので、ハルニレくんにご飯を提供することで私の気が済むのもある。
「はい、どうぞ、召し上がれ」
テーブルの上にサラダボールを置いた。お婆さんから頂いたポテトサラダの下にレタスを敷いて、彩りにプチトマトを並べてみると、見た目も鮮やかになった。
春キャベツとベーコンのペペロンチーノに刻んだオニオンを入れたコンソメスープ。どれもさっと作ったものではあるけれど、カップラーメンよりは栄養価が高そうなメニューだ。
「いただきます」
ハルニレは手にしたフォークを親指の間に挟んで、両手を添え、頭を下げた。畏まった祈りの儀式に見えて、何だか笑ってしまう。
「おいしいです」
パスタをフォークに絡めて、口いっぱい頬張るハルニレは目尻を下げて微笑んだ。
「おいしい」と作った料理を褒めてもらったのって、久しぶりな気がする。素直に嬉しい。大学生になってから、自炊を始めたのはあるけれど、彼氏においしい料理を作ってあげたくて、自己流で頑張ったのだ。
振られたけど・・・
いけない。私、またナーバスになってるし、頭をブルブルと振って、邪念を消す。