恋じゃなくてもイイですか?



建物の中に足を踏み入れた途端、田舎のお爺ちゃん家のような古い家、独特の匂いがした。昭和の香りとも言うべきか。


コンクリート剥き出しの三和土に、一段上がると目の前に階段が伸びている。


薄暗くて、少し寒い位だ。


客用のスリッパを出し、ハルニレくんは説明をする。


「部屋は一応、全部で6部屋あります。1階に2部屋と2階に4部屋。僕は1階の部屋を使わせてもらっています。主に仕事をするための部屋と、寝る部屋ですね。なので、2階の4部屋は全て空き部屋になっています」


1階にはその他に共同のお風呂とトイレがあるようだ。古い物件なので、建物と同じように年季が入ってるんだろうなと思っていたけれど、ハルニレくんがここに引っ越して来る時に、1部をリフォームしたらしく、バスルームとトイレは古い家に似つかわしくない、近代的な空間になっていた。


「ちなみに洗濯機も最新のドラム型です。商店街の福引きで当たりました」と脱衣所にある洗濯機を、少し誇らし気に説明する。


「僕の部屋は散らかり過ぎてて、とても見せられたものではありません。どの部屋も同じ間取りで、6畳1間の南向きになってます。僕がここに入居する時に、僕が使う部屋だけでもフローリングにしようかって話もあったのですが、それは断ったんです。畳って落ち着きませんか?なので、僕の移行で、部屋は全て和室になってます」


和室ね。実家には畳の部屋もあるけれど、今までの物件、どれもフローリングだったからなぁ・・・少し抵抗があるかも。


廊下を進むと、ここも刷りガラスの小窓が付いた古めかしい扉が現れた。刷りガラスには「1号室」と黒文字で表記されていた。ここが、ハルニレくんの部屋、その1らしかった。


「2号室」の前を通り、更に奥の部屋へと進む。「やにれ荘」1階、一番奥の部屋の扉の横には「食堂」と、表札と同じ木の板が掲げられていた。


ハルニレくんの後について、食堂の中に入った。まず目に飛び込んできたのは、大きな木を真ん中ですっぱりと割ったようなテーブルだった。そのテーブルの両側に公園のベンチでありそうな、背もたれのない長椅子が並ぶ。振り返ると、リビングのスペースに古ぼけたベロア生地の2人ソファにローテーブル、その前には大画面の液晶テレビが並ぶ。