ただでさえ、いるかいないか空気のような人だったのに、たぶん、誰と付き合ってるとか彼女の噂もなかっただろうし・・・彼女?
「あっ!」
そうだった。確かそんな噂があったと今、思い出した。思い出した私は思わず声を上げてしまった。
「あの噂って本当だったんだ?」
桐生くんに訊ねると、「俺も正直な所は解んないよ。ただ、俺とは普通に接してくれるけどね」とさらりと答えた。
「え、なに何?ねぇ、教えてよ。2人だけ知ってるのずるい!」
噂に心当たりがない結芽がテーブルを叩いて、悔しがる。私はハルニレくんが戻って来てないか店内を見渡して、机に身を乗り出した。右手を口元に当て、そっと囁く。
「ハルニレくんってゲイだって噂・・・」
「え!?ゲイなの?」
結芽が素っ頓狂な声で繰り返したので、桐生くんも私も唇に人差し指を当てて、し~と注意する。ゴメンとウーロン茶を飲んで、気持ちを落ち着かせた結芽が座り直した。
「確かにあった。そういう噂」
「そう、俺は大学の時、ハルニレと出会ったから、それまでのことは知らないけどさ。女の子に全く、興味がないんだ。ちょっと有り得ないだろ?って位」
彼女いたこともないし、経験もないんじゃないかなぁと桐生くんは呟く。だから、いつの間にかそういう噂が立ったのだとも。

