「えっ!?」
桐生くんを除く、他の3人が同時に声を発した。
「どういう事?」
「いや、変な意味じゃなくてさ、ハルニレって絵本作家でもあるけど、一応、寮のオーナーでもあるじゃん?」
「・・・寮?」
「ちょっと、見た目ボロイけど、なかなかいい物件だと思うよ。部屋空いてるんだろう?なぁ、ハルニレ?」
グッドアイディアと言わんばかりに桐生くんはにっこりと笑った。ハルニレくんはジョッキを包み込むように両手に抱えたまま、目をパチパチさせながら、グラスの淵についた泡を眺めている。
「確かに部屋は空いてますけど、寮として機能していたのは、随分前の話で____」
「でも、今でもお前、あそこに住んでんじゃん?結構、居心地いいんだろ?それとも、1人で自分の城を占領してたいのか?他人入るべからずって感じで?」
「そんなことはありませんが____」
ハルニレくんは、う~んと考え込んでいた。瞼を閉じたままピタリと止まり、そのまま動かないので、え?もしかして、寝ちゃった?と思って、顔を覗き込んだ所で、カッと目を開いた。
「解りました。もし、興味があったら、是非、内見に来て下さい」
「・・・はい」
私も思わず敬語で、返事をした。その場で連絡先を交換し、お互いの都合のいい日に、ハルニレくんが住む家を見学に行くことが決まった。

