恋じゃなくてもイイですか?



ジョッキが重なり合う音が響くと、結芽は照れながらも、嬉しそうに微笑んだ。


正直な所、彼にプロポーズされた事実を、親友に内緒にされていたことはショックだけれど、失恋した私に自分の幸せな報告をするのを躊躇った結芽の優しさも解る。


今日の飲み会だって、私がいつまでたってもウジウジしてるから、気分転換にって誘ってくれたのだ。


結芽に気を遣わせてばかりだな、私。いい友達だって、言える?いけない、またウジウジ悩んでるし。気持ちを高ぶらせるためにグッとジョッキの生ビールを煽った。


「私も!」


思った以上に大きな声が出て、自分でも驚いた。テーブルを囲む3人が私に注目する。


「私も、結芽の優しさにいつまでも甘えてないで、自立しようと思います!新しい家、探します!!」


右手を高く挙げ、選手宣誓のごとく叫んだ。


「奏多、私、全然気にしてないって言ってるじゃん。いいんだよ、気の済むまで家にいて」


「ううん、私、今、決めたよ。新しい家を見つけて、新しい私を始めるの」


頬が熱くなって、急に楽しくなってきた。これは、完全に酔っ払ってるなと頭の隅の冷静な私が判断する。結芽は、「落ち着いて、これ飲んで」とグレープフルーツジュースを手渡す。



「何?本宮さん、家探してるの?」


ジョッキを片手に桐生くんが私たちの話に首を突っ込む。「うん、まぁ・・・」と複雑な大人の事情を省いて、結芽の所に居候させてもらってるのだと説明する。へぇと桐生くんは頷いた後で、「だったら___」と続けた。


「だったら、ハルニレの家に住んだらどう?」