恋じゃなくてもイイですか?



「それにしてもすごい偶然の再会だったよな~。小出さんが俺の働いてる店に来るなんてさ~」


ほろ酔いの桐生くんが饒舌になる。店員さんにおかわりの生ビールを頼み、枝豆をつつきながら、隣に座る結芽の肩をポンと叩いた。


「ねぇ、まさかあんな所で桐生くんに再会するなんて思わなかったよ~」


グラスの水滴をおしぼりで拭きながら、フフフと結芽は笑った。


「小出さんは何を買ったんですか?」


ハルニレくんが素朴な疑問を投げかける。


「買ったっていうか、エンゲージリングの注文だよな?会社の先輩だって言ってたっけ?すらっとした___」


「桐生くん、それ言わない約束・・・」


結芽が慌てて桐生くんの口元を押える。結芽の表情を見て、我に返った桐生くんが蒼白になった。


「そうだったっけ?・・・ごめん、うっかり・・・」


ぼそりと呟く。結芽は項垂れて、チラリと向かいに座る私を見た。


「な・・なんだぁ、結芽、もしかして彼氏にプロポーズたの?嫌だなぁ、言ってくれればよかったのに」


「ごめん、黙ってて。奏多のこと考えたら、言えなくて___浮かれてるって思われそうで・・・」


「そんな風に思わないって、おめでとう!よかったね!!」


桐生くんの頼んだおかわりのビールが来た所で、席を立ち、自ら「結芽の幸せを祈って、かんぱ~い」と声を上げた。