パンプスを履き、さっき玄関の前に置いていた小さいキャリーバッグの中に、よく履く靴をピックアップして、何足が詰め込んだ。
玄関の扉を開き、外に出る。
それぞれ大きさの違うキャリーバッグを両手に持ち、扉が閉まると、ふっと力を抜いた。
塞き止めていた涙が、ダムの決壊のように流出し、私はエレベーターホールに向かった。
・・・追いかけても来てくれないんだね・・・
もぅ幻滅しかなかった。
「ねぇ、金曜日に飲み会行かない?」
「・・・飲み会?」
「そう。桐生くんって覚えてる?」
「キリュウ・・・くん?」
一瞬、ポカンとした表情になると、「●●大学の、一緒のサークルに入ってたじゃない?覚えてない?」と結芽は訊ねる。
小出結芽(こいでゆめ)は、大学時代からの友達だ。
お互いに就職してからも、休日にご飯を食べに行ったり、ショッピングしたり、お泊りしたり、旅行したり。
彼女とだけは、学生時代の延長線のような関係が続いていたのだけれど・・・

