恋じゃなくてもイイですか?



そう思ったらまた泣きそうになった。


ぐっと眉間に力を入れて、目頭を拭う。


ウザイとしか思われないのに、泣きたくない。


荷造りが終わるとトランクを引いて、ソファで寝ころぶ彼を見下ろした。


「タケちゃんの気持ちが冷めちゃったのが、私のせいだったとしても、やっぱり浮気は許せないよ」


彼は私を一瞥し、面倒くさそうに起き上った。


後ろ頭を掻き、ソファの上で胡坐を掻く。


「出て行くのか?」


言葉は発せずに、頷いた。


「・・・勝手にどうぞ」


その一言で、ガラスの心が粉々に割れたのが解った。


踵を返し、リビングを後にする。


バスルームの開いた扉から、さっきの女の人が置いて行った化粧水の瓶が見えた。


またここに来るつもり?私は出て行くのに?


止めどない怒りが溢れてきて、無意識の内にその化粧水の瓶を握りしめ、床に叩きつけた。


ガシャンと音を立てて、瓶は割れた。私の心と同じだと思った。