「あの人のこと好きなの?」
「いや」
「じゃあ、何で浮気したの?」
「浮気」という言葉を自ら発する日が来るなんて思わなかった。
彼はいつだって誠実で、私の事を大切にしてくれていた_____はずだった。
そう思っていたのは私だけだったのだと今、気付いたのだけれど。
「明るくて、大人の女性の色気があって、何よりも寝る以外の深い関係を望まない。一緒にいて楽なんだ」
深い関係を望まない___それってセ●レじゃないの?
「___奏多の事、好きだったよ」
少しの沈黙の後で彼が唐突に語り出した。
好きだった?過去形な所が耳に障る。
「かわいくて、何事にも一生懸命で、俺がいないと何にもできないから、俺が守ってあげないとって本気で思ってたよ」
だから、一緒に住むのも決めたし、くだらない愚痴にも付き合ってたと彼は続けた。
「でもさ、一緒に住みだしたら、急に奏多がオカンみたいに思えてきて____何を食べたかいちいち訊かれたり、洗濯とかゴミ出しとか、何でもやってあげなきゃみたいに思われてるのが窮屈で」
「だって、私はタケちゃんのために頑張ってたんだよ」

