あの女の人は一体何者なの?
彼女がいるって知ってて、同棲している部屋に上がり込んだの?
「信じられない・・・」
力なく呟くと、その場にへなへなと倒れ込んだ。
全て自分に起こったことなのに、テレビの前でドラマを見ているような気分だった。
暫くの間、彼も私の何も喋らず、沈黙が続いた。
バスルームから、彼女がドライヤーを使っている音が聞こえてくる。
沈黙が続き、メイクを終えた彼女が部屋を出て行く足音が聞こえた。
コツコツ、コツコツとヒール音が、静かな部屋に響いた。
「あの人、誰なの?」
震えそうになる声を押し殺して、初めに口を開いたのは私だ。
「・・・営業先の会社の人」
「付き合ってるの?」
「いや」
即座に否定する彼をじっと睨む。
彼は私ではなく、バルコニーに視線を向けていた。

