空音を奏でる宙


僕はそのまま椅子から立ち、頭を下げることもなく会場をあとにした。
時間にしておよそ五分のことだったと思う。
もっと晴れやかな気分になると思っていたが不思議とそうはならなかった。
それどころかなぜだか涙が出た。
それが何の意味を持つ涙なのかは分からなかった。

これが僕のラストステージだ。
少なくともそのときはそう思っていた。

僕は両親の反対を押し切り、家を出た。
十七歳での一人暮らしだ。


───物語はそこから始まる