拒否権など通用しない絶対的な義務。

ピアノを弾くために様々なことを犠牲にした。
友達との遊ぶ約束をレッスン時間で全て潰した。
指を怪我してはいけないからという理由で体育の授業もほとんど受けてはいない。
そこまでの英才教育。
杞憂もいいところだ。

もちろん、学校では孤立。
遊ぼうと誘ってくれる人は一人もいなくなった。
さぞ陰で悪口の対象となっていたことだろう。

それでも僕はピアノを弾くしかなかった。
コンクールではそこそこ良い成績を残していたがどれも三番や四番止まり。
さんざん僕の人生を振り回した家族でさえも落ちこぼれというレッテルを少しずつ貼りはじめた。