「これ、さんきゅーな」 ゆっくりとしたスピードで私の席まできた慧ちゃんは汗だく。 練習着を着ているから多分今の今まで忘れていたのだろう。 もし私が日直じゃなかったらどうするつもりだったんだろうか……。 「ああ、うん。お疲れ」 「おう、お前は日直?」 「まあね」 書き終えた日誌を持ちあげる。 慧ちゃんも扉の方へと身体の向きを変えた。 「1階まで行くんだろ?一緒に行こうぜ」 オレンジ色に照らされた慧ちゃんの顔が大人に見えて、 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけカッコよく見えた。